平成18年4月16日 天気:

室戸岬とお四国参りドライブ

「どっか行かんか?」

携帯が鳴ったのは朝の9時過ぎ。
遠出するには遅すぎるのですが、南の方か東の方かどこ行くぞ?、あいまいな照に誘われ、とりあえず着替えて照家へ。
おやおや?
照、とっくに車の助手席に座って待ってます。
ドアを開けるとタバコの煙がもやーーーー

「徳島、行こか?」

それは無理。
だって、10時前だし、高速も使わないっていうんだから、それはしんど過ぎ。
じゃあと、高知市内のお寺参りならって提案したら、

「室戸にしよや」

うーん。

納経帳のスタンプ集め遍路は愛媛が終わり、残すはあと3県。
なかでも高知は難所の連続で、室戸岬と足摺岬にある札所はめちゃ遠い…。
この春、照は1県1泊2日のペースでお参りするつもりと普段から話していました。
でも、さすがに室戸岬は高速では行けない辺境です。
一人で行かすのも心配だったので、ちょっと悩んで、OKしてしまいました。

でもね…。
後で計算したら、徳島市の方が近かった…。


33号線をひた走り、飛ばせるところはうんとアクセル全開。
でも、照号は軽だから山じゃ100キロ出ません、追い越しも必死。
山にはまだ桜が残っていました。
楽しむヒマはありませんでしたけど。

サカエの里・美川を通ると昔話が自然と口から出てきます。
黒藤川の向かいにある中津明神山には西岡の爺さんのみつまたの畑があって刈り取った枝を背負って山を何度も下りたとか、
面河の仕七川に親戚の家があり、サカエと山を越えて黒藤川の家まで歩いて帰った話とか、
極めつけは、また、夜這い話でした。
ハシゴ担いで行ったこともあるそーです。


いの町から車の流れが良くないので、高知市には昼にやっと到着。

信号待ちで今日1枚目。
久しぶりに見た土佐電鉄。

なんとか高知市内を抜けるもしばらく法定速度以下。
おまけに、「室戸岬まで70キロ」の表示…。

「うどんでも喰おや」

偶然入った安芸市のうどん屋「いおき家」さん。
讃岐仕込みのうどんはコシがあって美味しかったです。
トイレ行ってる間にもう出来てたし。
1時半なのにお客さんどんどんと途切れないし。
讃岐うどんってぶっかけとかがメインで、汁系メニューが少ないんだよね。
肉うどんで食べたかったなぁ、あのおうどん。

東へ向かうにつれ、車窓に太平洋が拡がり始めます。
強風注意報も出てるのに、外洋にしては波も穏やか。
停まって写真撮らせてもらおうか、どーしよーか、言い出せずにいるウチにどんどん、絵になる風景が過ぎていきました。
奈半利辺りでひょいと路肩に車を駐めました。
急いで堤防に駆け寄り撮ったのが下の写真です。

遠くにかすんで見えるのが室戸岬、…ではありません。
室戸岬の手前にある羽根岬と行当岬です。

「こんなに遠かったかのー。案外時間かかったのー。もー少し、早よ着けると思とったけどなー」

室戸岬やで! 遠いん当たり前じゃ!

もう、照は納経帳を手に持ってます。
でも、近付く岬が室戸岬じゃなく、まだ30分はかかると知って、やっと、室戸がいかに遠いか思い出したようでした。


この辺りからは70キロ平均で飛ばして、ローカルの軽トラもぶーんと追い越し。

最御崎寺(ほつみさきじ)に着いたのは午後3時前でした。(松山から5時間)

納経所は坂の上ですが、一つめのお寺なので照も元気、歩いて登りました。
伊佐爾波神社の半分くらいの高さって感じです。

誠にしては久々のカメラ目線ショットです。

なんだか一段と丸くなった気がしません(人として)。
一人暮らしでボケもせず、でも、老いには勝てず、
「ワシの言うとおりにしとったらええんじゃが」トークはめっきり少なくなりました。

四国霊場第24番 最御崎寺。

足摺にあった金剛福寺もそう。
難所にあるお寺は立派な感じ。

叩くと金属音のする不思議な石。
凹みに乗ってた石全部、ひとつずつ手にとって叩いてました。
ちなみに、全部の石で叩いた方が良いとは看板にも書いてません。

お参りして、納め札をとりあえず漁って、納経へ。
墨をドライヤーで乾かします。

今日の大目的である最御崎寺をクリアー。
後は戻りつつ、時間の許す限り、お寺を回れるだけ回るのみ。
でもその前に、観光です。
だって、室戸岬に来たの、2,3年ぶりだもの。
以前来たのはスクーターで四国一周ん時。

無関心な照は車を降りることもなく、僕は急ぎ走って海岸へ写真を撮りに向かいました。

前来たときは夏で暑かったなぁ、徳島からの海岸線は走っても走っても終わりがないみたいに長くて…、
などとセンチメンタルな感傷にふけるヒマもなく、車に帰ると、次のお寺に向かって来た道を戻りました。


第25番 津照寺。
本堂は石段の上ですけど、納経所は右の建物。
照が納経中に石段を1段とばしで駆け上がりました。

そうそう。
座ってるだけでも長距離は疲れます。
ここに来て照に、早く済ませたい病の症状が出てきました。
駐車場がちょっと分からずにいたら、
「そこに駐めたらええんじゃが!」
面倒くさそうに、路肩の、それもこれから発車しようかという対向車の前に強引に駐めろとお達しが…。
照がのろのろ降りた後、ふざけるな!と車の中で一人怒鳴ってしまったのは言うまでもありません。
でも、今日のドライブでキレたのはそれ1回きりでした。
照が丸くなったとも言えるし、いつもよりアクセル全開する僕の運転が怖くて、それどころじゃなかったのかも知れません。

最御崎寺手前で何度も腕時計見られた時は、
最御崎寺に行けたら充分じゃ言うたろ、なに焦っとんねんって、ちょっとカチンと来てたけどね。
皆さん、助手席で腕時計見るのはやめましょう。


本堂から戻ると、照、お遍路さん用の地図帳を買ってました。
お寺の前まで来たら、ここじゃ!って自信たっぷりなんだけど、道中はさっぱり忘れちゃってます。
買っては見たものの、地図帳見ながらでも照ナビはアテにならないので、僕が持参したツーリングマップの方が◎でした。
(いい加減、ツーリングマップも古くなったので、誰か買ってください ^ ^)
カーナビあったら良いけど、最近、照のよそ見時間は異常に長いので、交通事故が心配。
車載TVの値段とか気にしてたけど、それこそ、危ない、危険が危ないぞ!


第26番 金剛頂寺

次の金剛頂寺は国道から海から山へ2キロほど。
春のお遍路シーズンで、行く先々で歩き遍路さんとすれ違いました。
最御崎寺まで数十キロ歩いてきたと思ったら、ここでまた山へ上がらなきゃならないわけで。
高知はもの凄く歩かされる難所の連続。
歩き遍路さんとすれ違う度、そっと手を合わせる僕なのでした。
一方、照はいよいよ、スタンプラリー遍路の本性を現し始めます。
石段の先に納経所があるお寺では駐車場で納経帳を僕に手渡し、車で待機です。
バス遍路さんも、照以上に歳とって見える爺婆も手すりにつかまり、一生懸命、石段を登って本堂を目指します。
大師堂では写真のように、熱心にお経を上げられます。
照の合掌は短いです。
多分、お願い事しか唱える時間しか無いと思われ…。
まぁ、お経知らないので人のこと、言えないんだけど。

室戸岬にさよーならー

トイレ休憩と称して駐まって撮った、道の駅・キラメッセ室戸のクジラ君です。
ここにはクジラ博物館があって、大きな剥製も展示してます。
おすすめです。
一人なら絶対、見てくんだけど。
今日はこれだけで我慢です。
影を見れば分かると思うけど、もー、随分、陽も傾いて来てました。

4時過ぎました。

西日避けにバイザーを降ろし、走る海岸線。
一瞬、湘南を思い出すようなカーブがあったり、ドライブにはとても◎な道。
正直、男二人で走るのはつまらないです。

多分、帰ったら日が暮れてるなぁ、って往きに言ったら、「そんな事あるかぁ」って否定していた照ですが、時ここにいたり、ようやく、僕の予想が正しかったことを受け入れたようでした。

納経は夕方5時でお終いです。
次の神峯寺(こうのみねじ)で終わりになりそうでした。
けれど、神峯寺は国道から6キロも入った山の上。
山道は狭いし、カーブ連続で、距離以上に遠いお寺です。

第27番 神峯寺。
駐車場に駐め、照はやっぱり車待機しました。
納経所は坂を登った先だし、こんな石段のあるお寺じゃ、仕方ないです。

土佐の名水・神峯の水。
名水という割には残念ながら普通でした。
正直、皿ヶ嶺の方が美味しいです。

もう一度、室戸岬よ、さよーならー!

セイジのセはセンチメンタルのセ、などと独りごちつつ、駐車場に戻ると、茶店に照の姿がありました。
なんだか、そそくさと立ち上がる照。
よく見ると、缶ビールを飲んでたようです。
車に戻ると、「ほれっ」と、パックを投げてよこしました。
多分6コ入りだったろう、パックの中にはお饅頭が2コ残ってました。
饅頭4コとビール飲んでお気楽極楽な照なのでした。

もう、お寺参り(納経)は出来ないので、ゆっくり食べてからエンジンをかけた僕なのでした。


さて。
ここから写真はありません、ひたすら帰るだけですから。

照もお疲れ。
ビールでご機嫌、居眠りもこいてます。

「高速で帰ろや」

渋滞した高知市内や33号線の山越えを覚悟していたので、ラッキーポッキークッキー!!
少し気が楽になりました。

けれど、夜須町辺りで渋滞に捕まっているうちに、どんどんと日が暮れてゆきます。

「夕陽を見てると切ない事を思い出すんじゃが…」

夕陽を見てた照が昔話をし始めました。
戦時中の話でした。
北京から南京へ向かう列車の車窓から見た夕焼けがそれはもう真っ赤だったそうです。
そんな夕焼けを見ていたら、日本に残してきたサカエや妹たちの事が急に思い起こされ、とても心配になったそうです。
文喜もすでに出兵してるし、ちゃんと暮らせてるのか、どーしてることやらと、兄らしい事を思ったんだそうです。
夕陽を見ながら故郷を思い出すシーンはドラマや小説にありがちな光景とはいえ、そんな半世紀も前の事を未だに抱えてる照なのでした。

南国ICから高知道へ。
もー飛ばしましたよー! びゅんびゅん!
軽だと南国−川内間2600円。
家に帰って松山−室戸岬を地図ソフトで調べたら、往きは200キロ、帰りは20キロ多い220キロ。
けれど、単純計算ですが、なんと1時間半も短縮に!

400キロも走るようなドライブには往きも是非、高速で!とは言いませんけど、せめて、日の出とともに出発したい、僕なのでした。

実は、県境を越え、愛媛県に入った頃から睡魔の気配を感じてました。
以前、徳島からの帰りに室戸岬をショートカットする山岳国道で居眠り運転し、ガードレールに突っ込む寸前に目が覚めて肝を冷やした事があるので、正直、怖くて仕方ありませんでした。

一言、居眠りって言っても、それはまるで失神みたく、意識がロストした状態です。
といっても、本人は全然、その境を超えた事に気がつかないんです。
本人は起きているつもりだったりします。
頭の中でなにやら考えてる事柄が、いつのまにか夢に化けた、考え事と夢が直結してる状態なのです。
視覚をも奪われてしまいます。
“考え事を現実だと思って見ている”状態って、振り返るとホント恐ろしいです。

必死に耐えに耐え、石鎚山SAに飛び込みました。
ふぅー、助かったぁ。

「うどんでも喰うか?」

今思うと食べとけばよかったと思いますけど、満腹で余計眠たくなったら怖かった僕は、1分でも早く無事に帰りたい状態だったので、缶コーヒーひっかけて車に戻りました。


というわけで、無事、帰宅。
こうして日記を書けるのも、行く先々で運転の無事をお大師さんにお願いしまくった結果なのでしょうか?

寝不足のくせして、情にほだされ、ついつい長距離を引き受けてしまった自分に反省しています。

でも、照はご機嫌で、帰りに1000円くれました。

1000円…

とりあえず、よく運転した1日でした。
天気も良かったし、うどんは美味しかったし、芋けんぴは買えなかったけど、いつ行けるか分からなかった室戸岬に行けて良かった、よかった。


追伸:
翌日、すんごい疲労感と筋肉痛。
片道300キロくらい、全然平気だったのになぁ。
とほほ。

メモ書きへ戻る→